▲春には梅、桜、菜の花。夏には一面が緑のじゅうたんになる開放的なトイレ。トイレ=狭い個室が常識ですが、ここでは大自然の中でリラックスしながら用を足せる ▲春には梅、桜、菜の花。夏には一面が緑のじゅうたんになる開放的なトイレ。トイレ=狭い個室が常識ですが、ここでは大自然の中でリラックスしながら用を足せる

あまりにも広すぎて、初見ではトイレと気付かないかも!?

1人きりで過ごせるトイレは数少ない落ち着ける場所という人、多いですよね。でも「狭い個室ではなく開放感ある広い場所で用を足したい!」と思っている人もいっぱいいるでしょう。子供の頃に大自然の中で用を足した経験がある人は、一層その思いが強いはず。もちろん大人なので今は自制しますが……。

開放感を味わいたくてもグッとこらえていたあなた! もう我慢しなくていいんです。広いトイレで1人きり、堂々と用を足せる場所があるのですからっ!!

そのトイレは千葉県市原市にあります。最寄りの駅は小湊鐵道線の飯給駅。飯給と書いて「いたぶ」と読みます。最寄りというか、完全に隣接しているので駅のトイレと言っても過言ではありません。

ただ小湊鐵道線は1~2時間に1本しか運行していないローカル線なので、列車を待っていたら間に合わないかもしれません。ここはひとつ、車で世界一広いと評判のトイレに向かいましょう。いつでも好きな場所に行ける車ってやっぱ便利~♪(←強引)

▲列車でトイレに向かうと用を足している間に列車が発車し、次の列車を1時間以上待つハメに。ここは車で行った方がいいでしょう! ▲列車でトイレに向かうと用を足している間に列車が発車し、次の列車を1時間以上待つハメに。ここは車で行った方がいいでしょう!

カーナビは「目的地付近に到着しました」と言うものの、肝心の駅が見当たりません。車から降りて周囲を見渡すと……ありました! 線路沿いに数十m奥まったところに小さなホームが見えます。

▲「駅はどこだろう?」と思ったところ、道から数十m入ったところにありました。飯給駅は無人駅でのどかな雰囲気 ▲「駅はどこだろう?」と思ったところ、道から数十m入ったところにありました。飯給駅は無人駅でのどかな雰囲気

で……トイレは? 駅舎脇に古くて使われなくなったトイレはあるのですが……。おかしいなと思い振り返ると、茶色い壁に小さく女子トイレのマーク。なんと! 道路から駅ホームに向かう小道の左側にずっとこげ茶色の壁がありましたが、これが全部トイレだったのです。デカすぎて逆に気付かなかった。

▲ホームに向かう左手にある茶色の壁の中が全部トイレ。しかも個室はひとつです。こちらは女性専用 ▲ホームに向かう左手にある茶色の壁の中が全部トイレ。しかも個室はひとつです。こちらは女性専用

ここで、こちらのトイレのデータを掲載しておきましょう。

●トイレの名称:Toilet in Nature
●所在地:千葉県市原市飯給941-1(カーナビでは「飯給駅」で検索が便利)
●オープン時期:2012年4月
●広さ:約200m2
●定員:1名(女性専用)

……あれ??? ここは大きさをウリにしたトイレのはずなのに、名称はそっち方面ではないんですね。

実は市原市に問い合わせたところ、「こちらのトイレは世界的な建築家である藤本壮介氏によるアート作品。“世界一大きなトイレ”は、キャッチコピーとして発表し、予想以上に反響が大きかったのですが、名称としては“Toilet in Nature”を使用しています。藤本氏は最初にこの場所を見たときに桜や菜の花が咲き乱れる場所だったことから“自然の中のトイレ”というコンセプトが浮かんだそうです」とのこと。昨年春に市原市で開催した「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」でも、作品のひとつとしてエントリーしていました。

たしかにトイレは世界各国で風習も形状も違うので、何をもって世界一というかは難しそうですもんね(だだっ広い大草原だって「ここがトイレだ!」と言えばトイレになってしまいそうだし)。

ともあれ、飯給のトイレがデッカイことに変わりはありません。このトイレは残念ながら女性専用なので、同行したK奈さんに入ってもらいました。

▲ドアを開けると真ん中に個室がひとつ。ダイレクトに便器が置いてあるのを想像していましたが、きちんとプライバシーにも配慮されています。もちろん入り口ドアは施錠できます ▲ドアを開けると真ん中に個室がひとつ。ダイレクトに便器が置いてあるのを想像していましたが、きちんとプライバシーにも配慮されています。もちろん入り口ドアは施錠できます

K奈 「中に個室があるんだけれど、カーテンが掛かっているの。カーテンは閉めっきりでいいよね?」
高橋 「それじゃこのトイレの醍醐味を少しも味わえないじゃん! のぞかないから安心しろ!!」
K奈 「マジかよ……」


▲「自然の中のトイレ」というアートコンセプトを体感するためにも、カーテンをフルオープンにして利用してほしいですね。四季折々の花、晴れた日はさんさんと降り注ぐ日の光が味わえるはず! ▲「自然の中のトイレ」というアートコンセプトを体感するためにも、カーテンをフルオープンにして利用してほしいですね。四季折々の花、晴れた日はさんさんと降り注ぐ日の光が味わえるはず!

高橋 「どうだった?」
K奈 「……開放的すぎて落ち着かない」

個人的な意見になりますが、広くて開放的なトイレは女性以上に男性から需要があるはず(男なら「見られても、まぁいいか」と思えそうですしね)。ぜひとも次は男性専用の大開放トイレ建設をお願いします!!

▲個室でしゃがむと見える景色はこんな感じ。取材班が訪れたときは雑草が生えていましたが、市原市によると我々の取材直後に整備が入っているそう。みなさんが訪れるときはトップ画像のように素敵な風景が広がっているはずです ▲個室でしゃがむと見える景色はこんな感じ。取材班が訪れたときは雑草が生えていましたが、市原市によると我々の取材直後に整備が入っているそう。みなさんが訪れるときはトップ画像のように素敵な風景が広がっているはずです
▲トイレットペーパーはたくさん置かれているので安心。手洗いスペースや鏡は個室内にあるので雨が降っている日もリラックスして使えます ▲トイレットペーパーはたくさん置かれているので安心。手洗いスペースや鏡は個室内にあるので雨が降っている日もリラックスして使えます
▲次に使う方のために、使用後はカーテンを開けておきましょう。カーテンを閉めてしまうと、中に誰かが入っているか分かりません。カーテンは各面独立したものではなく1枚の布が全体を覆うタイプです ▲次に使う方のために、使用後はカーテンを開けておきましょう。カーテンを閉めてしまうと、中に誰かが入っているか分かりません。カーテンは各面独立したものではなく1枚の布が全体を覆うタイプです
▲女性用トイレの横には自然光がたっぷり入る多目的トイレがあるので男性はこちらへ ▲女性用トイレの横には自然光がたっぷり入る多目的トイレがあるので男性はこちらへ
text&photo/高橋 満(BRIDGE MAN)