カーセンサー5月号▲近年、若者にも人気のボルボ 240エステート。こんな「今乗ってもカッコいい!」絶版車の特集です

流行は、20年周期で繰り返される?

こんにちは、編集部の井上です。今月号のカーセンサー(2020年3月19日発売・5月号)について紹介します。

特集は「今乗ってもカッコいい!」と題して、今、世の中的注目度が高くなっている絶版車を6モデル取り上げました。 その6モデルは以下。

・ボルボ 240エステート
・ローバー ミニ
・トヨタ ランドクルーザー70
・トヨタ MR2
・メルセデス・ベンツ W124
・ルノー カングー

このような“ちょっと古い車”たち、これまでも、マニアからはある程度の注目度があったでしょう。しかし、近年では「車はよく知らない……」「そもそも今まで買ったこともない」「新車時は生まれてもいなかった」といったようなビギナーからも注目を集めているのです。

これは、80~90年代のファッションが、現代で再度市民権を得ているのと同じ現象。流行が「一周まわった」ということかもしれません。

しかし、リバイバル品を気軽に買うことができる洋服や靴と違い、中古車は探し方も選び方もけっこう難しい……。

ということで、流通データや相場変動、オススメの選び方や注意点をまとめたのが今回の特集です!

「車のことはよく分からないんだけど、あのレトロでカッコいいやつ欲しいんだよなぁ」というビギナーはもちろん、すでに基本情報は頭に入っているというマニアにとっても、数年の流通状況や相場変動を楽しめる内容になっていると思います。

ぜひ手に取ってみてください♪

表紙には2モデルが登場!

表紙を飾るボルボ 240エステートとメルセデス・ベンツ W124は、イラストレーターの遠藤イヅルさんの作品。ご本人よりコメントをいただきました!

ボルボ 240エステート メルセデス・ベンツ W124型 イラスト/遠藤イヅル▲カーセンサー3月19日発売号の表紙はボルボ 240エステートとメルセデス・ベンツ W124型
遠藤イヅル(えんどういづる)

イラストレーター/ライター

遠藤イヅル

1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はプジョー 309とサーブ 900。

線画で車を描くのって、実は難しい?

今回のイラストは、なんと「線のみ」です。

以前、一度「表紙がぬりえ」という大胆なアイデアを実現した号以来、久しぶりの線画イラストになりました。

カーセンサー 2017年10月号表紙▲こちらがカーセンサー2017年8月20日発売号のぬりえ表紙

通常のイラストでは、コピックや水彩を用いたアナログ描画+デジタル取り込みでデータを作成していますが、今回は、ぬりえのときと同様に、イラストレーターというドローイングソフトを用いて描画しています。

ソフトを使って描くというと、「手描きで描くより簡単そう」と思われがちです。ところが、線だけで車の特徴やディティールを表現するのは、ソフトを使ってもとても難しいのです。

また、どこまででも精密に描き込むこともできてしまうので、「どのあたりまで描き込むか、また省略するか」の線引きにもテクニックを要します。

実際の表紙ではさらにデフォルメされていますが、原画はこんな感じで仕上げました。

ボルボ 240エステート▲240エステートの原画
ボルボ 240エステート▲メルセデス・ベンツ 500Eの原画

1980年代の車がもつ魅力とは

表紙にチョイスされたボルボ 240エステート、メルセデス・ベンツ Eクラス(一般的にW124型と呼ばれる世代です)は、ともに1980年代~90年代に生産されていた車です。

現在でも輸入車はメーカーごとの個性がありますが、この当時の車はそれがもっと濃厚。ボルボは現在のようなスタイリッシュでスポーティなイメージよりは「質実剛健」、メルセデス・ベンツは、今よりも飾り気の少ない、実用本位のモデルを輩出していました。

最新車のように前車に自動で追従する機能などはもちろん搭載していませんが、メーカーごとに明確だった設計哲学、ちょっと古い車だからこそ得られるシンプルな内外装、窓が大きく視界が広く、車両感覚がつかみやすいことなど、この時代の車でしか味わうことができない個性に溢れています。

いまだに高い人気を誇る240エステート

1980年代に、日本にステーションワゴンブームを巻き起こしたボルボ 240エステート。ボルボは現在でも安全性と信頼性を全面に押し出していていますが、240シリーズは、大きなヘッドライトや無骨なバンパーなどが、その考え方を表しているようです。

ボルボ 240エステート

クラシカルな外観と広いラゲージスペース、おしゃれな雰囲気から、いまだに市場での流通台数も多く、高値で取引されている人気車です。

240シリーズは1974年から1993年まで生産されたモデルですが、さらに遡ると、原型は1966年に登場した140シリーズがベースになっています。

240シリーズにモデルチェンジした際、メカニズムや内外装を大幅にアップデートをしましたが、ドアなどボディの多くは140シリーズのキャリーオーバーでしたので、1990年代初期でも、1960年代の車がもつ雰囲気を色濃く残していました。

なお以前のボルボの車名数字1の位は「ドアの数」だったため、4ドアセダンは「244」、2ドアクーペは「242」、ステーションワゴンは「245」と呼んでいましたが、1983年以降、ボディ形状に関係なく「240」に統一されています。

「最善か、無か」を体現した “実用車の雄”、メルセデス・ベンツ W124型

現在のメルセデス・ベンツのラインナップはとても種類が多くなりましたが、1980年代はとてもシンプルで、Cクラスの前身となる190クラス、ミディアムクラスと呼ばれていたEクラス、フラッグシップのSクラスを中心とした構成になっていました。

1984年に登場したミディアムクラス・W124型は、ちょうどいいサイズ、広い室内、高い運動性能など実用車として必要な機能を高いレベルで備えた車で、高級車でありながら内外装には派手なメッキも化粧パネルももたないことが特徴です。

必要じゃないものはそぐ一方で、1本しかないワイパー、左右で形状が違うドアミラー、凸凹表面のテールランプなど「機能がデザインしたパーツ」を各所に採用。当時にメルセデス・ベンツが標榜していた「最善か、無か(Das Beste oder nichts)」というキャッチコピーを体現した車でした。

今回イラストにした500Eは1991年に出現。最高でも直列6気筒・3LエンジンだったW124型のボンネットに、330psの5L・V8エンジンを押し込んだモンスターで、開発や生産の一部をポルシェが担当したことでも知られています。

ノーマルモデルよりも張り出したフェンダーが見分けるポイントですが、決して派手な外観ではないことが、むしろ凄みを与えています。

その後、メルセデス・ベンツの命名方法変更に伴い、ミディアムクラスは「Eクラス」になり、車名も500EからE500になりました。

なお、ミディアムクラス時代の「E」は燃料噴射による燃料供給が行われていたことを示す記号だったので、190クラスも「190E」、Sクラスでも「560SE」などと表示していました。
 

メルセデス・ベンツ Eクラス▲こちらは「E500」

現代でもふつうに乗れる、80年代~90年代の車

今でも人気が高いボルボ 240とメルセデス・ベンツ W124型。憧れているけれど、古いモデルだから、維持が大変そうだなあ、と思う人が多いかもしれません。

たしかに、現代の車と違い、そのまま乗りっぱなしというわけにはいかないところはあります。五感を研ぎ澄まし、車が発する不調を感じ取ることも、長く乗り続けるには必要だったりします。この時代の車を知り尽くした専門店を主治医にもつことも大事です。

かくいうぼくも、現在1985年の日産 スカイライン、1988年のフォルクスワーゲン サンタナ、1992年のサーブ 900を持っており、日常で使っていますが、整備をちゃんと行っていれば、ごくふつうに2020年の路上でも最新車に負けずに乗ることができます。

まったくトラブルがないわけではありませんが、手間をかけて乗り続けると愛着も湧きますし、それ以上に「古き良き」時代の車に乗っているという喜びが勝るのではないか、と思います。

文/編集部、遠藤イヅル イラスト/遠藤イヅル 写真/早川佳郎、田中宏幸、メルセデス・ベンツ