クラウンクロスオーバー▲2022年9月にデビューしたトヨタ クラウンクロスオーバー。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏による公道試乗のインプレッションをお届けする

驚きの進化を遂げた伝統モデル

昭和からクラウンを知っている方にとっては、クロスオーバー化した新型クラウンを見て驚いたに違いない。私もその一人だ。

しかし、いつまでも変化を受け入れずに立ち止まっていては仕方がない。花や草木が季節によって変わることにより美しく感動を与えるように、変化なくして物事を成し遂げることはできないのである。そのあたりを受け入れて試乗することにした。

まずは外観からチェックしてみる。クーペタイプのサルーンは、ここ最近流行っているスタイリングだ。先代のシックスライトをさらにスタイリッシュにした前衛的なデザインだ。
 

クラウンクロスオーバー
クラウンクロスオーバー

サルーンのボディをリフトアップする方式は、アメリカでは90年代に存在していた。スバル レガシイセダンのリフトアップモデルも存在していたほどである。驚くパッケージングではないが、日本で、そしてクラウンでそれをやってのけるというのが肝なのだ。

先代までのクラウンのいいところは、何といっても堂々としたスタイリングながら扱いやすいサイズであることだ。特に車庫入れはまっすぐに入れやすい。乗り心地もスポーティにはなってきたが、角か取れた乗り心地が身上だった。伝統的に大切にしていた部分であったのだろう。新しいカテゴリーのクラウンクロスオーバーはいかがであろう。

エンジンは、伝統の縦置きFRベースから横置きのFFベースとなっている。フロントのモーターがおよそ120馬力、リアモーターが54.4馬力となり2.5Lガソリンエンジンとのシステム最高出力は234馬力となっている。これらからわかるように、フロントの荷重と動力を強くしているのである。
 

クラウンクロスオーバー

懸念点もあるが上々な乗り心地

まず一般道からの試乗だ。乗り込むときに感じたのは乗り降りがしやすいことだ。腰をかがめなくともスッと水平移動するようにシートに腰を収められるのは正直楽である。セダンベースのわりにヘッドクリアランスもゆとりがある。
 

クラウンクロスオーバー

走り出して感じたのは、モーターの発進、加速が滑らかなことだ。深く踏み込まず負荷を与えると専用設計の2.5LユニットとCVTがモーターとオーバーラップしながら始動する。

トヨタのハイブリッドシステムは、エンジンへの負荷が大きいのか始動後の吸入ノイズが気になっていた。だが、負荷が大きいときにこれらのノイズが気になる程度に進化した。

クラウンクロスオーバー全車にDRSという後輪操舵システムを取り入れ、小回りと高速時の安定性にも寄与しているという。一般道は申し分のない走りだ。フロントヘビーだがリアシートの乗り心地も考慮したセッティングとなっている。
 

クラウンクロスオーバー

一般道から高速に入る。みなとみらいからベイブリッジ方面に行く。負荷をそれほど与えず走らせてみたが、安心感のあるステアリングフィールはとてもいい。ベイブリッジの上の横風にもどっしりとしたボディは振れることもない。

タイトな首都高速も走って感じたのは。負荷を大きく、すなわちアクセルを深く踏み込んでいくと動力が増すが、このときの乗り心地に突っ張った印象がある。

ボディ剛性も高めているが、逆にしなやかさが損なわれるのが惜しい。しかも低速から高速側へ移行するときにステアリングを切るとトレースが難しい。

これはセッティングによるものだと思うが、世の中に発売するクラウンクロスオーバーが増えれば育つ部分であろう。まったく新しいモデルが初めから素晴しいなんてことはない。

この新しい発想で歴史を書き換えたクラウンクロスオーバーを世に発売したのは、新しく時代をけん引するのだ、という姿勢が垣間見れるのである。本当のクラウンクロスオーバーの真価は今始まったばかりなのだ。
 

クラウンクロスオーバー
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トヨタ クラウンクロスオー(現行型)×全国
文/松本英雄、写真/篠原晃一
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。