Aクラスセダン ▲もしかしたら「しょせんはハッチバックのAクラスがベースだから……」的な食わず嫌いをしている人も多いかもしれない、メルセデス・ベンツ Aクラスセダン。しかしその実像は、食わず嫌いをするなんて甚だもったいないナイスでプレミアムなコンパクトセダンなのです!

Aクラスセダンを侮ることなかれ!

「最新世代で手頃なサイズの輸入コンパクトセダンが欲しい」と思ったとき、真っ先に頭に浮かぶ候補車種はメルセデス・ベンツ CクラスやBMW 3シリーズ、あるいはアウディ A4である場合が多いでしょう。

それらはすべてステキな輸入セダンであり、間違いのない選択であるとは思いますが、ひとつ「大穴」的な選択肢が抜けているような気もいたします。

ここで言う大穴とは「メルセデス・ベンツ Aクラスセダン」です。

ベンツのAクラスというと5ドアハッチバックが有名というか定番なわけですが、2019年7月には4ドアセダンである「Aクラスセダン」が登場していて、これがなかなかステキな1台なのです。

そして現時点で中古車もすでにまずまずの数が流通しており、中古車価格も総額310万円~とまあまあお手頃。エンジンラインナップも使用目的や好みに応じて選ぶことができ、「ハイ、メルセデス」と呼びかければ起動する「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」も全車標準装備。

……という具合にナイスな選択肢であるにもかかわらず、メルセデス・ベンツ Aクラスセダンは「でもしょせんAクラスでしょ?」的な感じで侮られているような気がしないでもありません。

そこで、本稿では「Aクラスセダンを侮ることなかれ!」といったニュアンスをテーマとし、その中古車としての魅力を様々にアピールしてまいります。
 

Aクラスセダン▲こちらが現行型メルセデス・ベンツ Aクラスをベースに作られた4ドアセダン「メルセデス・ベンツ Aクラスセダン」
Aクラスセダン▲全長はAクラスハッチバックより130mm長い4550mm

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ボディサイズ:「ちょうどいいサイズ感」+「最新のデザイン」という組み合わせ

まずはメルセデス・ベンツ Aクラスセダンの「ボディサイズ」について。

Aクラスセダンのスリーサイズは、全長:4550mm × 全幅:1800mm × 全高:1430mm。

Aクラスハッチバックよりも全長は130mm長くなっていますが、全幅はハッチバックと同寸です。そのため、日本という道が狭い国でも「けっこう扱いやすい車幅感である」というのが、まずはAクラスセダンの美点となります。

一方、同門のライバル(?)である現行型メルセデス・ベンツ Cクラスのスリーサイズはどうなのかというと、そちらは全長:4755mm × 全幅:1820mm × 全高:1435mm。

Aクラスセダンの方が205mm短く、幅は20mm狭いということですが、これを「存在感的にちょっと寂しい」と取るか、「Aクラスセダンの方が“ちょうどいいサイズ”である」と取るかは、人それぞれでしょう。

しかし、少なくとも言えるのは、FR(後輪駆動)であるCクラスに対してAクラスセダンはFF(前輪駆動)であるため、構造的に「室内スペースを広く取ることが可能である」ということ。そのためAクラスセダンの室内は、コンパクトセダンであるにもかかわらず、けっこう広々としたものに感じられます。

また、トランク容量も420Lと十分なもので、Cクラスの455Lに決して大負けはしていません。
 

Aクラスセダン▲小さすぎず大きすぎないそのサイズ感は、都市部でスイスイ走りたい人にはうってつけといえる
Aクラスセダン▲トランクルームの容量は現行型Cクラスセダンの455Lに迫る420Lという、まあまあの大容量

お次、Aクラスセダンの「デザイン」はどうでしょうか?

メルセデス・ベンツの最新デザイン思想「センシュアルピュリティ(官能的純粋)」に基づいたエクステリアは、上下方向に薄いヘッドランプや低く構えたフロントエンド、ボンネットからAピラーおよびウインドスクリーンへの流れるようなラインなどにより、スポーティさを強調……などという広報資料から引き写したような話はまぁいいとして、「単純にこれ、カッコよくないですか?」というのが筆者の印象です。

通常、ハッチバックをベースに作られた4ドアセダンというのはトランク部分の「取って付けた感」により、お世辞にもカッコいいとは言い難いプロポーションになる場合が多いものです。

しかしこちらAクラスセダンは、おそらくはハッチバックと同時にデザイン制作を進めたからだと思いますが、違和感はほぼゼロ。なんなら「Aクラスハッチバックと直接の関係はないんじゃないか?」と勘違いしてしまうほど、セダンとしてのプロポーションは自然です。

また、インテリアのデザインもAクラスハッチバックのそれを踏襲しつつ、メーター用とインフォテインメントシステム用の2つのスクリーンを、1枚に見えるように並べたダッシュボードや、タービン型の円形エアアウトレットなどがかなりイカしてます。
 

Aクラスセダン▲ハッチバックの全長をストレッチして4550mmとしたそのプロポーションに「取って付けた感」はない
Aクラスセダン▲タービンの形を模したエアコン吹き出し口を採用するなど、高級感とスポーツ性とがなかなか絶妙に同居しているAクラスセダンのインテリア
 

走行性能:今どき「FFだからイマイチ」なんてことはまったくない

お次はAクラスセダンのエンジンラインナップと「走り」について考えてみましょう。

Aクラスセダンに用意されているパワーユニットは全部で5種類です。

・「A180」に搭載の、最高出力136psの1.3L 直4ガソリンターボ
・「A250 4マチック」に搭載の、同224psの2L直4ガソリンターボ
・「A200d」に搭載の、同150psの2L直4 ディーゼルターボ

またこの他、超ハイパフォーマンス版である「メルセデスAMG A35 4マチック」は最高出力306psの2L直4ガソリンターボを、プラグインハイブリッド車の「A250e」は1.4L直4ガソリンターボをベースとするプラグインハイブリッドシステムを搭載していますが、こちらの2モデルはやや特殊であり、中古車も希少かつ高額であるため、恐縮ですが本稿では割愛いたします。

で、1.3L直4ガソリンターボ+7速DCTの組み合わせは、トップエンドでの伸びやパワー感はさすがに少しだけ物足りない部分もありますが、低回転域からトルクフルなため、実用エンジンとしては十分以上の働きをすると思ってOKです。

そして「A250 4マチック」に搭載される224psの2L直4ガソリンターボ+7速DCTはさすがにパワフルで、コンパクトセダンのエンジンとしては「十分以上!」という印象を受けるはず。特に、センターコンソールにあるスイッチで「パワー」モードを選択すればかなり強力な加速感を得られますが、「エコ」や「コンフォート」モードでも普通に十分と感じられます。

150psの2L直4 ディーゼルターボ+8速DCTの「A200d」は未試乗であるため何も言えませんが(すみません)、同じエンジンを積んだAクラスハッチバックの印象から言うのであれば、低回転域でのトルクがすこぶる厚いため、街中での運転がとにかく楽で気持ちいいと予想されます。
 

Aクラスセダン▲どのグレードも十分以上に活発で上質な走りを披露するが、2L直4ターボのA250 4マチックは特に「ちょうどいいニュアンスの活発さ」が感じられて好ましい
 

とはいえ、車がお好きな人にとって気になるのは「でもCクラスはFRだけど、AクラスセダンはFFじゃないか!」という部分かもしれません。

確かに、昔は「高級車はFRレイアウトに限る」という風潮がありましたし、実際にFR車は、前輪が操舵のみを担当する関係でステアフィールが良好である――というのはあるでしょう。

しかし、今や駆動方式うんぬんにこだわるのは重度のマニアのみであり、また昔のFF車に特有だった「ステアフィールの気持ち悪さ」みたいなものも、最新世代のFF車ではほとんど感知できません。少なくとも筆者は、それを感知する自信がありません。

日本の速度域の中で普通に使う分においては、AクラスセダンがCクラスと違ってFFレイアウトであることのデメリットは「ほぼない」と断言していいでしょう。
 

Aクラスセダン▲A180とA200dはFF(前輪駆動)だが、今どきのFF車は「FR(後輪駆動)車と比べて著しく操舵フィールが劣る」なんてことはまったくない
 

先進機能・安全装備:MBUXをはじめ普通に充実

お次、Aクラスセダンの「先進機能・安全装備」は、新しい車ですので当然ながら、普通に充実しています。

2020年9月17日以降のモデルに関しては、アクティブブラインドスポットアシスト付きの「レーダーセーフティパッケージ」とリアビューカメラ付き「パーキングパッケージ」は全車標準装備で、高速道路の渋滞時に威力を発揮する「自動再発進機能」もA180セダン以外は標準装備。

A180セダンでも「ナビゲーションパッケージ」というパッケージオプションが装着されている中古車であれば、自動再発進機能が有効になっています。

2020年9月上旬までの初期型A180セダンでは「レーダーセーフティパッケージ」は25万円のオプション装備でしたが、それが装着されている中古車も多数流通しています。

そしてもちろん、「ハイ、メルセデス」でおなじみの自然対話式音声認識機能を備えた対話型インフォテインメントシステム「メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス(MBUX)」と、スマートフォンのワイヤレスチャージ機能も全車に標準で搭載……ということで、このあたりに関してもAクラスセダンは「Cクラスと比べておおむね遜色なし!」と言うことができるでしょう。
 

Aクラスセダン▲最新の世代は「レーダーセーフティパッケージ」が全車標準装備で、初期年式の中古車でも同パッケージをオプションとして装着済みである場合は多い
 

中古車のオススメ:A180スタイルとA250 4マチックのセーフティパッケージ付き

以上のとおり、メルセデス・ベンツ Aクラスセダンという車はちょうどいいサイズ感の実力派であり、カタログ的には1クラス上のCクラスと比較しても、大幅に劣る点などないということがおわかりいただけたかと思います。

では、そんなAクラスセダンの中古車をもしも買うとしたら、具体的には「何年式のどれ」を狙えばいいのでしょうか?

「なるべくお安く、でもなるべくいいモノを買いたい」という場合は、2019~2020年式のA180 スタイルのレーダーセーフティパッケージ付き、またはA250 4マチックのレーダーセーフティパッケージ付きがいいでしょう。
 

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メルセデス・ベンツ Aクラスセダン(現行型) × 「A180 スタイル」&「A250 4マチック」
Aクラスセダン▲手頃な価格で買いたい場合は総額300万円台半ばから後半の2019~2020年式が狙い目に。写真は日本仕様の「AMGラインパッケージ」に相当する本国モデル
 

新車時価格もエンジンも、そして駆動方式も違うこの2グレードですが、現在の中古車価格にさほどの開きはなく、いずれも総額340万~380万円あたりのゾーンで走行距離1万km台の物件を見つけることができます。

1.3LターボでFFのA180スタイルセダンにするか、2Lターボでフルタイム4WDのA250 4マチックセダンにするかは好みの問題ですが、2020年9月17日以前の両者はレーダーセーフティパッケージが標準装備ではなくオプション装備でした。

そのため、中古車を探す際には「レーダーセーフティパッケージ」や「Rセーフティ」などと表記されているかどうか確認することをオススメします。

Aクラスセダン▲こちらが、様々なパッケージオプションがあらかじめ装着された状態で発売されたローンチ記念の特別仕様車「A250 4マチック エディション1」
 

「もう少し出費してもいいので、できるだけ装備が充実しているモノを買いたい」という場合には、Aクラスセダンの導入を記念して250台が限定発売された特別仕様車「A250 4マチック エディション1」がいいかもしれません。

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メルセデス・ベンツ Aクラスセダン(現行型) × 「A250 4マチック エディション 1」

こちらのボディカラーはクリーンな印象の「ポーラーホワイト」で、コッパー(銅色)アクセント入りのブラックダイヤモンドグリルや、専用のコッパーアクセントが入った19インチAMGマルチスポークアルミホイールが装着され、運転支援システムの「レーダーセーフティパッケージ」と「ナビゲーションパッケージ」、 360°カメラシステムとヘッドアップディスプレイ、アドバンスドサウンドシステムが含まれる「アドバンスドパッケージ」も標準装備されています。

それでいて中古車価格は総額380万~480万円といったところですので、予算に余裕がある人にとってA250 4マチック エディション1は、非常にナイスな選択となるでしょう。

以上のとおりメルセデス・ベンツ Aクラスセダンの中古車は、現行型Cクラスセダンに近いクオリティと、Cクラスセダンよりも「ちょうどいい」と言えるサイズ感を、現行型Cクラスセダンよりも断然お安い予算で狙うことができる“大穴”なのです。

さらなる詳細をご自身でチェックしてみることを、強くオススメいたします。
 

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文/伊達軍曹 写真/メルセデス・ベンツ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。